紀の川市後田(しれだ)の住宅地で平成27年2月、同市立名手小学校5年生の森田都史君(当時11)が、胸などを刃物で刺され、殺害された事件の裁判員裁判(浅見健次郎裁判長)は15日、5日目の審理が開かれ、殺人と銃刀法違反の罪に問われている同市の無職、中村桜洲被告(24)の精神鑑定を行った大阪赤十字病院精神神経科の男性医師が、事件の背景として、中村被告に自分と無関係の物事を自分と結び付けてしまう「関係妄想」があると証言した。知的障害については否定した。
男性医師は過去に、事件被疑者の本鑑定や簡易鑑定を計130件程度担当。中村被告については、11回の鑑定面接を行った。
男性医師の証言によると、面接での聞き取りから、中村被告は中学2年生ごろから、妄想性障害の特徴である関係妄想を発症。事件との関連については、自宅近くでの都史君兄弟の何気ない会話や、近くで2人が棒のような物を持って遊んでいたことを、自身の家族の会話をまねてばかにしたり、凶器で自分を襲おうとしたりしていると、被害妄想を膨らませたと推測した。
責任能力については、中村被告が事件前にメールで大阪入国管理局に訴えた内容が、都史君兄弟のことだけではなく、自宅付近で会話していた住民や、似た名前の住民にまで広がっていたことなどから、「さまざまなことを考える自由はあった」と述べ、「精神病の影響はあったが、合理的に物事を判断することはできていた」との見解を示した。