海南市発注の公共工事に絡んだ贈収賄事件の発生を受け、同市議会は4日午前、緊急の全員協議会を開いた。出席した神出政巳市長は、市係長が逮捕される異例の事態が起きたことに陳謝した。県警は、逮捕された市係長が建築関連の資格を持ち、職場での発言力が強かったことも事件の背景にあったとみて捜査している。
全協には市議20人全員と市幹部が出席。冒頭、神出市長は「職員逮捕は誠に遺憾。市民の皆さまには心より深くおわび申し上げます」と話して頭を下げた。捜査には全面的に協力し、事実関係が明らかになった段階で厳正に対処するという。その後、非公開となった質疑で川崎一樹議長が「業者選定のチェックはどうだったのか。今後はどのように対応するつもりなのか」とただし、神出市長は改善する方針を示したという。
収賄容疑で逮捕された木下知海容疑者(46)は、都市整備課に3人いる建築担当の係長の1人。贈賄容疑で逮捕された和歌山市の建築設計事務所社長の会社で働いていた経験と、一級建築士の資格も有していたことから業務に精通していたとみられる。県警などによると、業者の選定で同事務所が選ばれるように計らい、入札を経ずに業者を選定できる1件30万円以下の業務を複数発注。課内では木下容疑者が決めたことに異議を唱える職員は少なかったという。市役所の敷地内の喫煙所で一緒になることもあった川崎議長は「見た目はワイルド。明るく冗談も言っていただけに一報を聞いた時は、まさかという気持ちだった」と話す。
事件は2019年5月ごろから12月ごろに発生。市発注の4事業の設計委託業務について、木下容疑者が事務所社長の会社を下請けにすることを約束し、見返りに265万円を受け取った疑い。木下容疑者は「遊興費に使った」と容疑を認めているという。逮捕された3日夜には、県警と海南署の20人以上の捜査員が段ボールを手に市役所に入り捜索した。