紀の川市後田(しれだ)の住宅地で平成27年2月、紀の川市立名手小学校5年生の森田都史君(当時11)が、胸などをナタのような刃物で刺され、殺害された事件の裁判員裁判は6日、殺人と銃刀法違反の罪に問われている同市の無職、中村桜洲被告(24)が、午後の審理で午前中の罪状否認を覆し、起訴内容を認めた。今後は、中村被告の量刑を争点に審理が進む。
午前の審理では、冒頭の罪状認否で、検察側が朗読した起訴内容に対し中村被告は「僕はやっていない」などと一度は否認。弁護側がすぐに休廷を要求し、約5時間後の午後3時すぎに再開後、再び罪状認否を確認されると、中村被告は頭をかきむしりながら「認めます」との言葉を口にした。
冒頭陳述では、中村被告の事件当時の精神状態が、善悪の判断や行動のコントロールが著しく低下する心神耗弱(しんしんこうじゃく)であったとして、検察側と弁護側の双方が一致した。
検察側は殺害の動機について、中村被告は25年10月から26年4月ごろまで勤めていた警備会社を辞めて引きこもりがちとなっていたところ、同年12月ごろから都史君と都史君の兄が、中村被告の自宅近くで棒を持って遊んだり、甲高い声を上げたりしている様子を目にし、自分が2人に見られたことから「自分が嫌がらせを受けている」と感じ、不安を募らせたと指摘。「兄弟のどちらかを殺せば、もう一人もおとなしくなる」と考え、その後に見つけた都史君の殺害につながったとした。
弁護側は、中村被告の事件当時の精神状態について、妄想性障害や統合失調症を発症しており、「病気による間違った認識があった」として、裁判官や裁判員らに量刑の考慮を求めた。
この日は、空き地で中村被告に刺された都史君を発見し、救急車を呼んだ元付近住民への証人尋問が行われ、事件直前に、自宅周辺で遊ぶ都史君と、2本のナタのような刃物を持った中村容疑者を目撃していたことが証言された。